0623 山陰(2)出雲大社と玉造温泉

山陰旅行

初夏の山陰ガラスキ旅行(2)

なんて不便な、出雲大社

サンライズ出雲は午前10時に「JR出雲市駅」に着いた。だが、そこから出雲大社まで行くのが一苦労だった。「JR出雲市駅」から「出雲大社」までは11キロ。電車は一時間に1本、バスは2本しかない。待ち時間も含め、なんやかやで合計一時間もかかってしまった。
この原因は1990年に「JR大社線」廃止されたからだ。大社線がある頃には駅から歩いて参拝できたのだが、今はとっても面倒だ。和風駅舎の最高傑作とされる「旧大社駅舎」は重要文化財として残されたのだから、ついでに線路も残しといてほしかった。列車利用者が少ないから仕方ないかも知れないが、この現在の不便さは何とかならんものか。

「JR出雲市駅」「電鉄出雲市駅」「出雲大社前駅」があって出雲の駅は分かりにくい。私は電車で行った。「JR出雲市駅」から「電鉄出雲市駅」へ徒歩で移動し「一畑電鉄」に乗った。途中「川跡(かわと)駅」で乗り換えて「出雲大社前駅」まで30分。そこから出雲大社までは徒歩で10分。一畑電鉄はなかなか 味のあるローカル線だったが、帰りは、島根ワイナリー経由の路線バスに乗ったのだが40分もかかった。

「稲佐の浜」のイサギ良さ

出雲大社わきにある「出雲大社連絡所」なるバス停で降り、タクシーで「稲佐の浜」に向かった。この浜は、八百万の神が上陸し1km先の出雲大社へ向かうとされる重要な地点だ。出雲大社参詣の前にぜひともこの浜を見ておきたいと思った。

「稲佐の浜」にはデカイ岩が一つあるだけで他に「な~んもない」。この岩の名前は「弁天島」。かつては海の中に浮かぶようにあったものの、しだいに砂浜が広がって陸地化してしまったそうな。この岩の上には小さな鳥居があるだけ。あたり一帯には何も無い。

「何も無い」ってことも面白いものだった。仕方ないから何かを探そうとあたりを見回した。足元の砂を視、岩の凹凸に触り、打ち寄せる波の音を聴き、空を見上げた。次第に気持ちが落ち着いてきた。「ふ~む、ナ~ンも無いことも良いもんだ」って思った。

これほど何もない観光地も珍しいが、その「いさぎ良さ」は一つの大きなメッセージだと思った。15分ほどで引き返し、帰りのバスに乗った。

デカけりゃ良いのか? … 巨大しめ縄


出雲大社といえば「大しめ縄」を思い浮かべる。私は、これまで本殿にあると思っていたが神楽殿」にもあった。しかも神楽殿の方が巨大で長さで2倍、重さは5倍もある。見上げるとすごいぞ。
そして前庭には日本一の国旗がそびえ立っていた。国旗掲揚塔は47m、国旗は75畳(縦8.7m・横13.6m)もある。出雲の人たちはデカイものが相当好きなんだろうね。

巨大神殿を夢想する

「デカイ」といえば、かつての「御本殿」はとてもデカかったらしい。今ある本殿は高さ24mだが平安時代には倍の48mあったと伝えられて来た。
そんなのウソだろって言われていたのだが、平成12年に本殿前庭から大きな柱を3本束ねた大柱が発見されて48mの巨大神殿が実在したことが明らかになった。

平安~鎌倉時代にかけては6回も倒壊したというし鎌倉~江戸時代にかけては矮小化して18mの「仮殿式」だったという。「出雲大社」は時代とともに変化してきたってわけだ。

48mの巨大神殿のCG復元図を見ると結構な迫力だ。これに較べると現在の本殿はチンケだ。私が島根県知事だったら、このデカイやつを稲佐の浜」におっ建てることを提案したいな。

古代・出雲大社本殿の復元 大林組プロジェクトチーム https://www.obayashi.co.jp/kikan_obayashi/detail/kikan_27_idea.html
●「古代出雲大社の復元」
http://inoues.net/mystery/izumo_nazo.html

消えちまった … 「出雲大社庁の舎」

今回、私が一番残念に思ったのが「庁舎」
現在の「新庁舎」は何の面白みもナイが、建て替え前の「旧庁舎」はとんでもなく魅力的だった。

50年前にモダニズム建築の傑作と評価された出雲大社庁の舎」は、「稲掛け」をモチーフに50mに及ぶコンクリートのワンスパン構造のもの。天才建築家菊竹清訓ファンのみならず、出雲大社ファンにも人気が高い境内の建築物といわれたものだった。
しかし老朽化と慢性的な雨漏りのため改築が検討されたのだが、その維持費が建築費を上回ったということから解体されてしまった、残念至極なり。

<参考> 《出雲大社庁の舎》は、1964年にアメリカ建築家協会(AIA)汎太平洋賞、芸術選奨文部大臣賞、日本建築学会賞作品賞の各賞を受賞した。

■ 出雲大社庁舎_出雲・2008年5月 http://1955nonnon.jugem.jp/?eid=66

ン~ … ! いいぞっ…このソバ

出雲大社境内は思っていたほど広大じゃなかった。本殿と背後の八雲山とを一帯になった境内は厳かで、とっても心地よかった。想定と異なったのが門前町。コロナのせいかも知れぬが「あれ?これだけ…」というほど小規模かつ活気がなく残念だった。

さて、お目当ての「出雲そば」だ。
日本三大「郷土ソバ」
といえば戸隠そば」「わんこそば」「出雲そば」だ。私が、むかし食った「戸隠そば」は美しく盛られたザルそばで今でも懐かしく想出すことができる。今回の「出雲そば」は如何なるものか? 大いに期待した。

タクシーの運ちゃんに尋ねたところ、「ソバ屋ですか? ん~、18軒ほどあるかな … お薦めは「◎」「▼」「■」かな 」ちょうど目の前が食べログの書き込みで一番人気だった「○○や」だったけど、それが含まれてないので可笑しかったナ。

事前候補の十割ソバ専門店「砂屋」へ寄った。この店は以前ならば開店前から行列が…ってことだが、さすがにコロナだ「5分ほどでお出しできますよ」。客はほかに一組だけだった。
出雲そばの特徴は「玄そば」と呼ばれる「実ごと」挽いた粉を用いる。黒っぽくコシが強いのが基本。「釜揚げそば」と「三段割子そば」を頼んだ。

「おっ! しっかりしてて良いねっ」さすが十割そば、久しぶりの合格そばだ。まともなソバで嬉しかった。「釜揚げそば」は、冷水で洗って締めないからすぐにふやけるから食べるのが忙しい。でも、この作り方なら手数が減るから自宅でそば打ちする時に楽チンだ、とても参考になった。

「リベンジできて嬉しい」。かつてこの地で「美味しくなかった」経験をもつ奥さんも喜んだ。まともな店ならマトモな蕎麦だったわけだな。

「古代出雲歴史博物館」で疲れた

出雲大社へ参詣してから「古代出雲歴史博物館」に立ち寄った。展示物は、200本以上の銅剣・青銅器・古代出雲大社本殿の10分の1模型など。昨年完成した横浜市役所と同じ槇文彦氏の設計だから期待した。エントランスが100mもあり現代的な展示室だったのだが、でもこれは私の趣味には合わなかった。ひと回りしたけれど疲れたな。その後JRに乗り一泊目の「玉造温泉」へ向かった。

三名泉として復活した「玉造温泉」

全国に数ある温泉のなかで「草津温泉」「有馬温泉」「下呂温泉」が日本三名泉と言われる。これは林羅山の詩文記載に由来するそうな。
それに対して「湯はななくりの湯、有馬の湯、玉造の湯」なる枕草子記載の「日本三名泉」もある。この3つは、三重「榊原温泉」、兵庫「有馬温泉」、島根「玉造温泉」を指すと言われる。

「玉造温泉」は、出雲風土記にも出てくる日本でも最古級の温泉と言われており、山陰地方でも有数の温泉地だった。しかしながら、昭和~バブル期に向けて大型旅館化などの開発が行われた結果、時代のニーズに乗り遅れ衰退の一途をたどり、温泉街に15軒あったうち4軒の旅館が倒産した。

そうした危機から再生し「第一回温泉総選挙2016 (*)」で最高の「環境大臣賞」を受賞するまでに復活したのが「玉造温泉」だった。
(*) http://www.uruoi-japan.jp/onsen/

賑わいの再生に成功した作戦

・美肌効果を謳い「ターゲットは女性客に絞る」
・「美肌研究所 姫ラボ」を設立、温泉の美肌作用を科学的に検証して20商品を開発
・温泉街に専門店舗と通販サイトを開設(年商3億円超)
・TV、新聞、雑誌などの広告に幅広く掲載され、美肌温泉としての知名度が飛躍的に向上
SNSで拡散に着目しフォトジェニックな場所つくり。
・夏祭り、子供向けのキッズ夜店を45日間連続開催

こうした効果が奏して大学生の卒業旅行で温泉街があふれるようになった。年間70万人台だった観光客は110万人に、店舗数は18店から38店へと増加した。

「佳翠苑 皆美」は、食事も風呂もガラ空きもステキだった

宿泊した「佳翠苑 皆美」は、多くの文人に愛された松江市内の「皆美館」が、別館として玉造温泉に開業したもの。松江にある「皆美館」のお庭は、日本全国庭園ランキング(*)で「桂離宮」に次ぐ堂々の第三位「佳翠苑 皆美」は43位旅館としての評価は5つ★のさらに上のSランクともいわれる。(*)旅館や旧別荘を含む約1000の候補地の中から世界各国の専門家により選出された日本庭園のランキング

●「佳翠苑 皆美(かすいえん みなみ)」 https://www.kasuien-minami.jp/points/
dトラベル 佳翠苑皆美(クチコミ)  https://travel.dmkt-sp.jp/hotel/7323003/reviews/

 

普段ならば予約が取りにくいと言われる旅館だがガラスキだった。ひろ~い大浴場や露天風呂には数回入ったのだが、いつも誰一人いなかった。もてなしも部屋や風呂や料理も、さすがに高評価の宿だけあって文句のつけようがなかった。
夕食を食べたあと、すごく疲れていることに気づいた。私は普段には夜8時には寝ちまってるし、 朝は3~4時頃までうつらうつらしてる。昨夜はサンライズ出雲で遊び過ぎ?たようで、やっぱり寝不足だったんだろう。夜行列車は放っておいても疲れが溜まるだろうから、いくら楽しくても、老いぼれはもう乗らないほうが良いと思った。

つづく

 

 

 

 

 

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