0811 可哀相な、あいちトリエンナーレ(1/2)

街と文化

「あいちトリエンナーレ2019」の開始は昨年8月はじめだった。広く世間を騒がせた「表現の不自由展・その後」問題の後始末は、あれから一年を経た今もまだ収まっていない。

私は愛知県に生まれ、18歳までそこで育った。
名古屋へはときおり行く機会があったのだが、あまり好きな都市じゃなかった。町並みが落ち着かず、文化的施設も中小規模都市並みで、大学の数は驚くほど少ない。これでも中京=中部圏の中心か…?と 子供心にも 寂しい気持ちにさせられたものだった。
2010年に第一回展が開催された「あいちトリエンナーレ」は、文化不毛…いや、文化未成熟の地にやっと花開いた希望の光のようだった …… 第3回までは。

それを一気に貶めた元凶はいったい誰だったのか? 

「あいトリ」のはじまり

2000年代後半に愛知万博中部空港開港の2大プロジェクトを成功させ、好調なトヨタの業績に引っ張られ活気づいた中部経済界が次に目指したのが文化芸術振興」だった。
2007年に愛知県初のマニュフェスト知事選が行われ、3期目をめざした神田真秋候補は「ビエンナーレのような国際芸術祭の開催」をマニュフェストに明記した。これは、名古屋市の中心にある「愛知芸術文化センター」の活用が政治課題でもあったことから、有識者会議を複数回開催した中身を受けてのことであった。3期目当選を果たした神田知事は、その年に「文化芸術創造あいちづくり推進方針」を策定し、 「あいち国際芸術祭」 の定期開催を決めた。

2010年の第1回、「あいちトリエンナーレ」と改称しての開催結果、来場者数は想定の2倍の57万人、当初予算18億円に対して1.5億円の黒字、経済波及効果は78億円。現代美術については海外を含む75組が参加した日本最大規模の国際展となった。商業施設・複合施設を使った文化芸術の日常生活への浸透。 衰退つつある長者町地域への地域コミュニティ形成面での影響や 鎮痛剤となり (祭りとあいちトリエンナーレの相乗効果により、大いに活性化・アートセンター成立)など、当初予想以上の成果が得られ、大成功だった。

その後も観客動員数は第2回62万人、第3回60万人と順調に経過した。 「 あいトリ」は、まちなか展開が大きな主軸になっているが、これは第1回の芸術監督、建畠晢が打ち出した方針である。「長者町繊維街」では空き店舗が減り、あいちトリエンナーレ2016の会場探しに苦労するまでになったという。第2回目に会場となった岡崎市でも市民も知らないエリアが注目のスポットになるなど、街や人にさまざまな影響を与えてきた。前回の第3回までは高評価でホントに順調な開催だった。

監督とテーマ

【芸術監督】は展示の一部を担当するのではなく、芸術祭の全体をディレクションする。第二回監督の五十嵐 太郎氏の説明によると以下のよう。
< 芸術監督が最初に行う重要な仕事は、まずテーマを決めること、そしてキュレータ・チーム、パフォーミング・アーツのプロデューサー、オペラの演出家、広報、デザイナー、教育普及など、組織体制を整えることである。ここに県や市など行政からのメンバーも加わる。巨大なイベントゆえに、当然一人では遂行できない。チームの作業であり、相互の調整も仕事だ。 >
いわば【 総責任者 】 だ。 専門性はもとより、行政との関係をはじめもろもろの人間関係の調整など多様な対応能力が必要とされよう。「 あいトリ」の監督には、第2回が建築批評家、第3回は写真評論家と、美術畑以外の人選がおこなわれた。

第1回 監督:建畠晢(国立国際美術館館長)
   「都市の祝祭 Arts and Cities」
第2回 監督:五十嵐太郎(東北大学教授:
建築史・建築批評家
   「揺れる大地-われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」
第3回 監督:港千尋(多摩美術大学教授
:写真家・写真評論家 )
   「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」

   
そして、昨年2019年の第4回の全体テーマは「情の時代 Taming Y/Our Passion」、芸術監督にはジャーナリスト(?)の津田大介氏(45)が起用された。

その際の、芸術監督選考委員会の委員は学識経験者7名(建畠晢 “委員長”、五十嵐太郎、港千尋、加須屋明子、中井康之、藤川哲、水野みか子)が2回の議論を経て、津田氏を推薦した。
〈 津田大介氏 の推薦理由(抜粋)〉
○社会問題に関する情報を発信し続けており、世界が大きく変動する時代において、新しいタイプの芸術監督像を期待できる。
○テーマ性の高いコンセプト、エッジの効いたワクワク感のあるものを創り上げ、アピールすることができる。
○バランス感覚に優れ、また、情報を整理する能力にも長けている。

ライターとしての実績しかない津田氏を、なぜこれほどまで評価して選出したのか? 
これが一番の謎だ。あきメクラの監督選考委員会 は懺悔モノだな。

とんがりすぎにも程がある

実行委員会の大村秀章会長(愛知県知事)は、WHO事務局長のテドロスそっくり。それも問題だが彼は津田に「とんがった芸術祭にしたい」と委嘱状を渡したという。

2019年展では「現代美術展」「舞台芸術」の二本立て。芸術祭監督に与えられている権限は大きい。監督に就任した津田氏は「現代美術展」に関しては学芸員が提出してきた作家を避け、問題となった「表現の不自由展・その後」を自らが提案した。その結果が開始から 3 日で中止した周知の一連の騒動だった。

騒動となった 「表現の不自由展・その後」は、全体で 106 あった 「あいトリ」企画のうちの一つにすぎないしかしこの一件が問題視されたことで「あいトリ」全体のイメージダウンは否めなかった。 騒動の原因をさかのぼると明らかに「津田氏の行動」に問題があった。

<以下図版は『あいちトリエンナーレ「展示中止」事件(岩波書店)』より転載>

つづく

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