0926 さよなら… 原美術館

街と文化

12月末をもって閉館

品川にある「原美術館」が2020年12月末をもって閉館することを知った。最後にもう一度 ぜひ行かなくちゃと思ったが、コロナの影響で臨時休館のためなかなか行くことが出来なかった。ファイナル企画展 が9 /19~来年1 / 11までということで見に行った 。

企画展は「光―呼吸 時をすくう 5 人」 (出品作家:今井智己、城戸保、佐藤時啓、佐藤雅晴、リー・キット)。(閉館は来年 1 月の会期終了後に変更された)

建物に対する、最初の感想はサナトリウム?

20年ぐらい前だったろうか、原美術館へは東京出張の際に何気なく寄ったのだが、とても強い印象をうけた。「サナトリウムみたい…だ」ってのが、原美術館へ初めて行ったときの感想だった。「サナトリウム」は結核などで長期療養する人のための療養所。
原美術館の建物の外観はタイル張り、そして建物の内部から眺める何もない芝生の庭。お屋敷のような塀に囲まれた静謐感は、私には時間が止まった病院のように感じられた。

原美術館は、実業家・原邦造の私邸を美術館にしたもの。建物は昭和13年(1938年)に建てられ設計者は渡辺仁。彼はあらゆる歴史様式をこなす名手として知られ、上野の東京国立博物館本館や銀座の和光本館を設計した。渡辺はこの原邸で、鉄とガラスとコンクリートという新しい材料と幾何学的なデザインを用いて、モダニズムに通じる透明感にあふれた造形美を作り上げた。戦後はGHQに借り上げられ、その後十年ほど放置されていたものを美術館として活用するように改修し1979年に開館したのが原美術館だった。

この度の閉館理由は老朽化。エレベータも無いからバリアフリー化はもちろん困難。群馬県の伊香保にある姉妹館のハラミュージアムアークを「原美術館ARC」と改称し、そちらに活動拠点を集約するとされている。現在の建物は閉館後は展示をおこなわず、一般には非公開となるという。御殿山という屈指の高級住宅街にあるのだから、てっきり超高級マンションでも建てるのだろうと思っていたがそうでもないらしい。

WEBには多くの原美術館の記事があるから参照してください

今回展では建物の内部も庭も撮影不可だった。 私が、言葉だけでゴチャゴチャ書くよりも写真入りのWEBでの紹介のほうがズット理解しやすいでしょう、下記のページを是非ご覧ください。

■モダニズム建築の原美術館で現代アートを観賞する
このWEBページで、原美術館の概要がわかります。
https://archive.sumau.com/2016/page_category/parent_information/sumaus_scene/559.html

■「一つの節目を迎えた」 原美術館館長が語った閉館という決断の理由
https://dot.asahi.com/aera/2019092000016.html?page=2
AERA 2019/9月記事より。原俊夫さんによる開館の経緯やハラミュージアムアーク。

■邸宅美術館のアートな空間 [第1回 原美術館(旧原邦造邸)]
https://www.teien-art-museum.ne.jp/archive/privatemuse/pm_backnumber01.html
2008年の大改修で美術館専用の照明設備が

常設展示の面白さ

1階と2階の大部分は特別展示に使われるのだが、いくつかの常設展示が 建物の隅のそこかしこに ある(下写真の左上から順に)。
・タイルで覆われたジャン=ピエール・レイノーの『ゼロの空間』(1981年) 
・奈良美智のアトリエを再現した小部屋『My Drawing Room』(2004年) 
・森村泰昌の作品の元トイレ『輪舞』(1994年)  
・宮島達男のデジタル点滅「時の連鎖」(1989-1994年)
・ 関根伸夫『空相』(1980年) 
・李禹煥『 -関係項- 』(1991年)

室内の常設展示はいずれもユーモアがあるものばかり。狭い建物に合わせてコンパクトなスケールで密度がある。屋外の彫刻展示は芝生とマッチして穏やかに佇む感じ。周囲と響き合う味わい深さは、街ナカに設置されたパブリック彫刻の味気なさに較べて雲泥の差がある。

見納めにワインを

ガラス張りのテラス席からは、建物の曲面にそって芝生の中庭が眺められる。このカフェには展覧会の作品にちなんで創作した「イメージケーキ」メニューがある。90年ごろから始めたというが面白い企画だな。
席に座ってる人たちは皆さんボーっとお庭を眺めている。それぞれがこれまでの原美術館との思い出を辿っているのだろう。スマホをいじってる人は誰もいない。
もはやこんなステキな美術館を、今後つくることは出来ないだろうな。
「これでさよなら」かと思うと胸が熱くなった。

近ごろ、私はこういうカフェではワインを頼むようになった。
お値段もコーヒーや紅茶とそんなに違わない。以前は「ワイン頼んでもいいかな?」と奥さんに聞くと、< 昼間っから飲むの? >と非難されたが、退職後の今はもうフリーパスだ。おかげで次第にワインの味の違いが少し分かるようになってきた。
< どう? サイゼリアの百円ワインより美味しいでしょ…>
奥さんの 嫌味は相変わらずだけど。

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