横浜美術館での展示レベルは予想以上で十分満足した。だから第2会場の「プロット48」にも大いなる期待を持って向かった。
この二箇所の会場は歩いて7~8分ほど離れている。ところが「プロット48」の前に広がるのは開発中の広大な空き地 (写真の赤丸が「プロット48」 )だから、どこか寒々しい。「芸術祭」というちょっと華やいだイメージを持ちながら、こうした現実的な街ナカを移動するのは…なんちゅうか、物足りない気分がした。祝祭的な何かを演出して欲しかったな。
さて「プロット48」は、かつて「アンパンマンミュージアム」だった建物( 写真下左) 。この建物は1996年竣工なので建築後25年ほどになる。建築時はまだ周囲が埋め立てたままの状態で遠くに海が見える(写真下右)。中川都市建築設計が建築し当初はその事務所として使っていたようだ。この建物を「アンパンマンミュージアム」が10年間の定期借地として借りてオープンしたのが2007。その後昨年の2019年5月に閉館したから12年間ほどの利用になる。現在この土地は都市再生機構(UR)が所有し、跡地は“プロット48 (PLOT 48)”と呼称されている。
もはや建物は廃墟
かつては子どもたちの歓声に包まれた建物も今は壁も床も剥がれ落ち廃墟感が漂っている。芸術祭の会場としては「面白い空間」とみるべきか「こりゃ酷い」とみるべきか評価が分かれるだろう。わたしは個人的には「ナンジャこの会場は!」って思ったけれど
「プロット48」の会場に入ってまもなく違和感を感じた。展示してある作品が「キレイに見えない 」「どこかハンパ」なのだ。 なぜかこの会場の廃墟感に見合った「スクラップ感?」がある。「まるで文化祭のような…」「学生が作ったハンパな…」そんな作品のような気がした。
なぜだろうか? たしかに技術不足で雑。いい加減な展示といった作品レベルが低いものも見受けられるが、作品だけのせいじゃなさそうだ。
そうか、会場のせいか!
そのうちに分かってきた。こりゃ会場のせいだろうな。
剥がれた床、塗装がハゲたり日焼けした壁、低い天井、窓からの外光のためにせっかくのスポットライトが無駄。そんなもろもろの悪条件によって作品の見え方が台無しになっていたのだろう。
これらの作品も「横浜美術館」の、あの広々した快適空間で効果的なライティングがなされればきっと全く違った見せ方が出来るはず。「ちょっとコリャ作品が可愛そうだな」と思った。
そんな作品の中でも「学園祭レベル」でありながらも「いちばん異彩を放っていた」のがエレナ・ノックスによる《ヴォルカナ・ブレインストーム》だった。これは昨年の黄金町バザールで エレナ・ノックス が企画したワークショップで作られた作品を展示したもの。
そのワークショップ の内容は、「エコスフィア」という、空気、海水、微生物、海藻、エビが入った自己完結型水槽の中で、エビだけは繁殖することをやめてしまう。 どうすればエビたちは恋する? セクシーになれる? というのを考えて発表するというものだった。
だから、実際の作者は エレナ・ノックス以外の素人さんによるもの。したがって、思いつきのおバカギャグをはじめとした 手作り感満載の「作品群」が拡がっていたわけだ。
発想トレーニングの「演習課題」の発表会として見ればたいへん面白い。でも、真摯に表現に立ち向かっている多くの他の作品に較べて、これらのヘンチクリン作品の方が興味深いというわけだから「ゲ、ゲンダイアートってなんや?」って困っちゃう観客も多いだろうな。
【黄金町バザール2019】エレナ・ノックス「ヴォルカナ・ブレインストーム」ワークショップ https://www.youtube.com/watch?v=t4syEJteVfE
エレナ・ノックス「ヴォルカナ・ブレーンストーム」/ Elena KNOX “Volcana Brainstorm”
https://www.youtube.com/watch?v=-OwsXQtQ10s&feature=emb_logo
『ヨコハマトリエンナーレ2020』プロット48のピアノとエビとポルノ(感想)
http://theory-of-art.blog.jp/archives/32952997.html
第2会場の「プロット48」では、第一会場の「横浜美術館」とは全く異なる感想を持ったのだった。
つづく