下電バスに乗って「児島」へ向かっ た
初日は「倉敷」、2日目は「直島」だ。
倉敷から直島へ行くには、普通はいったん岡山まで戻り、そこで宿泊し2日目の朝、JRで宇野を経てフェリーで直島へ渡る方法。あるいは初日に直島まで行き宿泊するらしかった。
でも私たちは、せっかくだから「瀬戸大橋」を間近に眺めようとおもい「児島」に宿泊した。
初日・2日に利用したのは「岡山・倉敷2デイパス」。
これは大原美術館入館料(1,500円)込み2 , 060円ポッキリで岡山~倉敷~児島~宇野まで行けるからタイヘンお得なキップだ。このチケットなら、岡山までいったん戻らすに、下電バス を使って倉敷から児島へ行ける。「下電」は「下津井電鉄」の略称。かつては鉄道路線も持っていたが、瀬戸大橋線の開通で大打撃を受けて鉄道業からは撤退。だから今はバス路線のみの運営。だが社名は「電鉄」のまま。
児島までは約50分程。「つまんない道…」奥さんがボソッと言った。ごく普通の日本の田舎道だった。昨年の九州旅行でも思ったことだが、いまや日本中の田舎がどこかよく似た特徴がない風景になってしまってるな。
児島の宿は「せとうち児島ホテル」。駅前にホテル送迎のマイクロバスが待っていた。他の乗客は老夫婦が一組。15分ほどで町を抜け丘を登ってホテルに着いた。このホテルのウリは素晴らしい眺望。瀬戸内海に浮かぶ島々や瀬戸大橋が一望できるということだった。
■ 瀬戸内の海と島、「児島」だよ
部屋は6F、部屋の印象はまあ普通のリゾートホテルかなと思ったのだが、どっこい窓からの景色がとんでもなく素晴らしかった。
「お~ッ、これが瀬戸内海かッ…」
おだやかに横たわる夕方の海。漂うような島々。四国までつづく巨大な瀬戸大橋。見事な光景だ。
「いや~、ここまで来てよかった! 岡山あたりに泊まらなくて良かったな」
さっそく露天風呂に行った。浴槽からも気持ち良い見晴らしだった。やはりお客さんはコロナで少ないようで、他にはずっと二人のおっちゃんだけだった。二人の会話は瀬戸大橋の運営を心配していた。橋の維持管理費、利用料が高いからみんなが使わない、列車は安いようだ…
次第に暮れてゆく瀬戸内の海を眺めながらの露天風呂は極楽だった。
こんなに美味い牛肉は初めてだった
夕食は最上階の 9Fでフレンチ。ここもまた見晴らしが良い。広さがあるのだが5組程しかいなかった。
驚いたのは「肉がとってもうまかった」こと。コースメニュー表には「岡山県最高級黒毛和種『奈義和牛』A5ランプステーキ」とある。TVの食レポで「とろけるようですね~」とかいう表現を聞くが、そこまで行かずとも初めて体験する柔らかさだった。美味い肉もあるもんだな。
私は肉料理を頼んだのだがなんとサザエの壺焼きのような 大きな 「ニシ貝のグリル」も出た。肉と魚のフルコースってことだ。思いもよらない夕食のフレンチ の充実ぶりに大満足した。
じつはこのホテルは 2食付きで実質1万円弱だったから 料理はほとんど期待していなかった。GOTOを使ったから35%引きだったのだが、こんなにお安くてこんなリッチな食事内容とは、凄かった !
ホテルのフロントをはじめレストランのスタッフの多くが外国人。 皆さん日本語がとっても上手だった。このホテルは相当の経営努力をしてるんだろうね。
私はそんなに風呂好きじゃないけれど、展望露天風呂にはその後2回入った。暗く沈んだ海の夜景そして瀬戸大橋を 時折通る列車の灯りも見ることができた。
謎の鉄塔と塩田跡地
部屋の窓から海を眺めたとき、どうしても気になる物件があった。
太陽が沈み込む西側のハズレに錆びた鉄塔が一本立ち足元には古びた建物が見えた。高さは150mほど。これは一体何だろう?
翌朝、タクシーで児島駅へ向かう際に運ちゃんに尋ねてみた。
「あ~あれはね、150人ぐらい乗れる丸い観覧席があってね、回転しながら 上まで上昇したんですよ。 世界一 だったそうですよ。ゴルフ場経営でボロ儲けした人が下のホテルと一緒に作ったけど、10年もたたずに廃業してそのままなんですよ。」
後で調べたらあれは「レインボータワー」と言って廃墟マニアの間では有名だそうな。
その後で運ちゃんが児島の土地について説明してくれた。
「ここらは元は「塩田」だったんですよ。 海水を汲み上げる入り浜式塩田だったけど、 イオン交換膜式に代わってからは 埋め立てられてそこにJR児島駅なんかが作られたんですよ。」
あたり一帯は、もともと入り江で塩田王と呼ばれた野﨑家の塩田だった。瀬戸大橋が完成すると塩田跡地には児島駅と道路が整備され新興地区ができた。いまの「児島駅一帯」は少し前までは塩田用の浅瀬の浜だったわけだ。それから30年がたつ。このあたりが塩田であったことを知らない地元の子どもたちも出てきてるそうな。
わずか10分ほどだったけれど、タクシー運ちゃんからいろんなことを教わった。