ゴボウ掘りに来ない?
Eさんから電話があった
< ゴボウ掘りに来ない? >
「 あ…、行きます、行きます!」
嬉しくって、すぐに出かけた。
葉山に住んでるEさんは借りた畑でいろんな野菜をつくってる。一年前に伺った際に野菜類をいただいたこともあり、「サツマイモを掘ったら取りにいくから…。」と、先月半ばにお願いしておいた。
今年は「ゴボウ掘り」に声をかけてくれた。
ふだん私が使ってる買い物袋やレジ袋を持参して、朝8時50分の京急に乗った。逗子・葉山行きの下り列車は空席がポツポツある程度の混み具合。駅に着くたびに高校生が乗ったり降りたりしている。私も高校時代は列車通学だったから懐かしかった。
金沢文庫駅を出ると乗客が ほとんどいなくなり、窓外の景色もローカル線ぽくのどかになる。「逗子・葉山駅」のホームに降り立ったとき「あ、海が近いな」と感じた。汐の香りが漂っているわけじゃないけれど不思議に海岸が近い空気感がある。
やっぱり逗子はリゾート地だな。
ゴボウ掘りはとってもタイヘンだった
私は、かつて年末帰省した際に実家の畑でゴボウを掘ったことがある。ゴボウは地中に長く伸びるから、深く土を掘らねばならない。一畝で20本ほど掘ったかな?イモ類の収穫に比べてすごく疲れた記憶がある。
実家の畑は黒土だったからポロポロ崩れる土だった。でも、Eさんの畑は粘土質だから重くてネッパってる。だからとってもタイヘンだった。二人でヒーヒー言いながら、やっと2本のぶっ太いゴボウを掘り出した。
太い2本のゴボウに加えてサツマイモ、大根、白菜、パプリカ、カブ、小松菜…など、無農薬野菜をいろいろ頂いた。それらの野菜を、肩がけできる重量物用袋とタップリ入るレジバッグ型袋に詰め込んだ。
ゴボウがはみ出し、しかもパンパンに詰まった買い物袋を両腕に2つ下げてると、どう見てもスーパーや八百屋で、思いっきり野菜を買っちまったアホオヤジにしか見えない。そんな大荷物を抱えて列車に乗ってる人はあまりいないから、自分でも可笑しかった。
畑仕事を考えた
逗子・葉山駅から、帰りの京急で30分。
その間に、いろいろ思うところがあった。
現職の頃は、「退職したら、実家に戻ってのんびり畑仕事でもやるか…」って思っていた。でも、そんなことしなくて良かったと思った。
畑仕事は予想以上にタイヘンだ。
腐葉土や堆肥をつくり、水を運び、 草取りし病害虫と戦う。夏冬を通じて一年中手入れして、収穫物が多すぎたら配りまくらねばならない。生きものを扱う面白さの反面、タイヘンさも多くある。
田舎に育って実家での畑仕事を見ていたから、自分でもできるだろって軽く考えていた。
しかし今回、いろんな工夫しながら育ててる Eさんの 畑を見廻して、
そしてゴボウ掘りして分かった。
「私には、農作業は到底ムリだ!」
知識もいるし体力もいる。しょせん私には無理だったナ…。
私には農作業の知識がほとんど無い。車も運転したくないし、階段も上りたくない。そんな無知で横着な人間が年取ってから田舎に戻って農作業を始めることなんか出来るはずない。雑草や害虫に追われまくり、土起こしに音をあげるだろう「のんびり畑仕事」なんてものは現実にはありえない。
フ~、危ないとこだった
相続した実家近くには、病院も少ないし車がないと買い物も不便だ。先日はまた「めまい」を危うく 再発しそうになった。自分の無能力を自覚せずに「畑仕事ぐらい何とでもなるサ…」って、相続した土地家屋にこだわって実家に戻っていたら、今ごろはタイヘンだったろう。
実家を捨てるには決断が要った。
3年前に、姉たちとの相続を1年近くかけてやっと解決し、土地家屋の売却と法的手続きをし、多額な納税を済ませた。いま、そのころの一連の書類を見ながら振り返ると「タイヘンだったなあ、こんな厄介なこともう二度としたくない」と思う。
もしも相続後に売却せずに実家に戻っていたらどうなってたことやら。甘く考えていた農作業に挫折して…、土地を売却し… どこかの便利な都市部のマンション探しを開始…、そんなことに陥ってたかと思うとゾッとする。
「フ~、危ないところだったヨ。」
Eさんとのゴボウ掘りは、そんなことを考えさせてくれた。