私は旅行好きだって…?
昨年は瀬戸内と軽井沢へ旅行した。
一昨年は九州を、つい先日は伊豆半島を旅行した。
だから私は旅行が好きなんだろって思われるかもしれないが、じつは私は旅行するのがそんなに好きじゃナイ。できれば何処へも出かけずに自宅でのんびりしていたい、ぐうたらで無精な怠け者なのです。でもね、そんな私でも「旅行に行かなきゃならない」訳があるのです。
それは、奥さんが「旅行するヨっ!」と言ったら、決して断れない…私だからです。言葉ではうまく説明できないのだけれど、いつの間にかそういう上下関係になっちまってるのです。
イヤ、と言えずに苦労する
それで不思議なんだけどネ、うちの奥さんは自分が行ったことがない土地へ旅行したいだけじゃなく、「かつて自分が旅行した所へ私を連れて再訪したい」らしいのです。北海道では礼文島、九州では由布院~阿蘇・雲仙~長崎と、ハタチそこそこの頃に時刻表を繰って一人旅したその場所へ、私を連れて行ってくれました。だから、そうした所へは【私のために付き合ってくれる旅行】でもあるってことで、無下に断りにくいのです。
先日、奥さんは新たな旅行プランを示してきた。
<山陰へは行きたくナイですか? >
そう私に問いかけた。山陰といえば島根・鳥取なんだけど、出雲大社から鳥取砂丘へは、やっぱり奥さん一人で行ったことがあるそうだ。
私は思った。
「ほら~又きたよ…山陰…? べつにそんなとこ、私しゃ行きたくないよ」
ホントは心の中でそう思うのだが、イヤとは言えない私は、
「…あ!、ハイ、行きたいです…ぅ」と卑屈に答えてしまったのです。
私だって、一人でふらふら旅行するのならば「好き」なんだけど、奥さんの旅行提案に、私が躊躇するのには理由がある。それは「旅行の準備作業」が、私にとってあまりに「タイヘンで苦痛」だからなのです。
旅行準備は嫌いで苦痛
奥さんの旅行の準備がいったん始まると、一週間・十日間と作業がつづく。
そして私には、こんな「課題」が次々と繰り出されるわけだ。
< 今日中にガイドブックの「るるぶ鳥取」を全部見ておいてネ >
< 明日は「るるぶ島根」全部見てね >
< 出雲の駅~大社見物に必要な時間を考えて! >
<「出雲そば」はどこが良いのか調べておいて>
< 松江市内の観光スケジュールを決めて頂戴 >
< 鳥取でランチするなら… >
じつはいずれも奥さんの頭の中では、すでにプランが出来てるようなのだけど、私に考えさせようと思うのか、次々と課題を出すのです。
私は、時刻表を見るのが苦手で旅行のスケジュールを考えるのが大嫌い。
でも、それなのに毎日「課題」が出されるものだからとってもツライのです。
< 鳥取辺りでどこか行きたいとこ無いの? >
そう問われて、
「そういえば、砂丘の写真家の美術館が有ったかな…?」と、つい言ってしまった。奥さんさっそく調べ上げて言った。
< あったよ、植田正治写真美術館だね。高松伸の設計だよ。ぜひ行こうよ。ついてはあんた行き方を調べてよっ! >
「しまった。でしゃばったことしてしもうた。」
この美術館への「足が」とんでもなくタイヘンだった。私には手に負えずにギブアップした後を次いで、奥さんは役場や美術館に電話してデマンドバスやタクシー利用の可能性を探っていった。
< いいですか、こうやって調べていくのよっ >
「あっ、とっても参考になります。ハイ」
まるでJTBデスクのよう
どうやったら出てくるのか分からないような電車やバスの時刻表をプリントしてファイリングしたり、露天風呂の展望の違いや、宿の夕食のメニューの違いなど、徹底して調べあげていく。そうして一通りの行程を組み上げてから横浜駅にあるJTBへ出向くものだから、
< 拝見させてください。は~、よく考えられてますね。助かります。>
手間が省けるものだから、JTBのおね~さんが喜んでしまう。
いったん旅行計画の準備作業がスタートすると、我が家のリビングテーブルは、まるでJTBデスクのようだ。資料でいっぱいになる。
これが連日続くものだから、私はいい加減参っちまう。
「おまえ、ガイドブックやネットや電話で一日中調べててよく疲れないな~、大丈夫かよ… 」
そう言ったら奥さんが答えた。
< 平気だよ。私、好きだモン! >
そうか、奥さんはこういう作業が好きだから苦にはならないんだ。わたしは苦手で嫌い。だからすぐにバテバテでヘトヘトになっちまうんだ。
「あのさー、出雲市には出雲大社と出雲そばしかナイだろ。松江には松江城しかナイし、鳥取には砂丘しかナイ。山陰ってホントになにもナイんだね。もう行かなくっても良いような気が… 」
ふとそうつぶやいたところ逆襲された。
< なによ!、あんたが行きたいって言うから計画してるんじゃないのよ。いまさら何言うのよ… >
きっかけは奥さんが<山陰は…どう? >だったけれど、いつの間にか「私が行きたいと言ったじゃナイの?」ってことになっていた。
ま~、奥さんの才覚のおかげでいろんな旅行へ行けるわけだし、その辺りで抗ってもしかたないから、「あ、どうもスミマセン。やっぱり行きたいと思います…」って下手にでるわけだ。
コロナのおかげ?
今回の山陰旅行は「夜行寝台のサンライズ出雲」で行く予定。
これは、人気がありすぎていつもなら予約自体がすごくムズカしい列車なんだそうな。それから山山陰を代表する温泉地「玉造温泉」で、一番のしにせ宿。これも通常は予約が取りにくいのだそうな。
今はコロナで、旅行客が少ないから、列車も宿もいずれも余裕で確保できそうだ。その点ではコロナのおかげってわけだな。
< また、鳥取砂丘に行けるなんて…、嬉しいっ >
そう、奥さんが言っていた。
やっぱり、私のためじゃなくってもう一度、自分が行きたいだけかもしれないな。
