「神奈川県展」を調べたら…
「県」が主催する美術展は「県展」とよばれる。
神奈川県にも「県展」がある。神奈川の県展は、主催者が県でありながらも地域的制約を設けていないから、全国どこに住んでいようとも出品できるいわば全国ベースの公募展だ。そして大賞は大盤振る舞い、なんと200万円だ。
私は一昨年これを観に行ったのだが、なかなかのレベル作品もあって楽しめた(昨年は中止)。だから今年は開催するならば観に行こうかと思った。それで今年の予定を確認しようと「神奈川県展」と書き入れてググってみた。
で…、ネットで出てきたのがコレだった。
[A]『第88回県展(公募)』2021.4/28/~5/3、会場<横浜市民ギャラリー>
「あれ~、ヘンだな? 前回、観に行ったときの会場は<神奈川県民ホール>で、時期は9月頃だったような…」そう思って<神奈川県民ホール・ギャラリー>の展覧会案内を調べた。すると以下のような案内があった。
[B]『第56回神奈川県美術展』<神奈川県民ホール・ギャラリー>
1期展 [平面立体] 8/25~9/5
2期展 [工芸・書・写真] 9/8~19
前回、私が観に行ったのは、たしかにこの展覧会だった。
どれが神奈川の「県展」なのか?
そこで判明したことは。
神奈川県が主催する、いわゆる「県展」は、<県民ホール・ギャラリー>の[B]『神奈川県美術展』で、<横浜市民ギャラリー>の[A]【 神奈川県美術家協会 – KENTEN 】は、民間の【美術公募団体展】だということだった。
「県展」じゃない団体が、略称に「県展」を名乗ってるから分かりにくさ満開なわけだ。
さらに、その他に分かりにくい展覧会 [C・D・E] も出てきたゾ。
[A]『第88回県展(公募)』(神奈川県美術家協会-KENTEN)
[B]『第56回神奈川県美術展』(神奈川県美術展委員会)
・上述した2つに加えて
[C]『第43回神奈美公募展』(神奈川美術協会)
[D]『第36回県美展』(神奈川県福祉美術連合会)
[E]『第76回ハマ展』(横浜美術協会)
と … けっこう歴史のある美術の公募団体展が、神奈川・横浜には合計5つもあった。
なんじゃコリャ!
かつて私が住んでいた北海道にも、道展・全道展・新道展・道美展など、団体展が4つもあったからそれほど驚かないけれど、全国どこも同じようなものなのかナ…。
ちなみに最近5年間の大賞受賞作品はコレ。
ところで[B]『第56回神奈川県美術展』では分野ごとに大賞があったり各賞があるから賞金総額は623万円だった。しかしこれまで200万円だった「平面立体」分野の大賞が今回から値下げされ、100万円になった。他分野の大賞が50万円だから批判が大きかったのだろう。
ネットに図録アーカイブがあるから過去の受賞作品を確認することができる。
最近5年間の「平面立体」分野の「大賞受賞作品」を以下に示した。レベルは、どうってこと無い … マア … 普通 カナ 。
2019年 |
2018年 |
2017年 |
2016年 |
2015年 |
各地の美術公募団体
日本の美術公募展は作家主体の特殊な団体展だから、かつてよりその功罪が語られてきた。独立、二紀、国展、日展などは一般社会にたとえれば一流会社で、出品して会員になることが絵描き社会でのステータスになる。公募展会場は周囲の作品との闘いの場でもあるから、アピールのために作品が次第に巨大化してアクが強くなる傾向がある。
しかしながら会員と出品者間の教育的機能により、地方においては趣味文化の一環としての美術創作の維持に大きく貢献していることは確かである。その面では発表団体の数が多いことは望ましいことではあるのだろう。
県などの自治体主催の【県展】が無いのは、北海道・東京都・石川・ 福井・愛知・京都・大坂・熊本で、それ以外の県にはすべてある。そして山形・岐阜・奈良の各県では神奈川県展と同じく制約がない。だから全国から誰でも出品できるようになっている。
昨年の公募展はコロナで全滅だった
国立新美術館のスケジュールによると、今年度は【中止】の文字が見当たらない。
昨年と違ってほぼ開催予定のようだ。ただし春の日展とも呼ばれる『国展』だけが【中止】だった。これは、2021年4月25日(日)~5月11日(火)まで、4都府県に対する緊急事態宣言の発令を受け国立新美術館が臨時休館するため。
『国展』のホームページには「第95回国展受賞者・推挙者・入選者発表」が表示されている。
すでに作品搬入から審査までは完了していたようだ。
<緊急事態宣言>なんてことは、ホントは不必要なことだ。
まったくもって残念だ!。