0728 信州(1)あずさ5号で上高地へ

上高地・軽井沢旅行

高原リゾート信州旅行(1)

旅行に出かけたのは7/15だった。
梅雨前線による集中豪雨や大雨がやっと峠を超えた。松本の天気予報は「雨マーク」から「曇り/晴れ」に変化した。どうせ山の天気は変わりやすいし、そろそろ梅雨も終わるからきっと大丈夫だろう、そう思いながら出発した。

今回旅行の一番の目的は上高地帝国ホテルに宿泊すること。
このホテルは、奥さんのクラシックホテル行脚における永き夢の終着点だった。客室数74室、予約がなかなか取れないことで知られているが、そこはそれ、コロナのおかげで絶好の時期に余裕で予約できちゃったわけだ。ついでと言ってはなんだけど「松本城」と「碌山美術館」も堪能しましたよ。

松本まで3時間

横浜~八王子まで1時間、そして中央本線で2時間、合計3時間で松本駅へ着いた。「ふ~ん3時間の乗車か…、松本まではけっこう近いんだな」そう思った。

私が乗った新宿発8:00の「あずさ5号」は2019年に導入されたばかりの新型車両でとっても快適。これはかつて「あずさ2号」と呼ばれた列車だった。そこでどうしたって想い出しちまうのは、売上累計80万枚!1977年「狩人」のデビューシングル「あずさ2号」のこんなフレーズだ。
< 明日私は旅にでますぅ… 8時ちょうどのあずさ2号で 旅立ちます~ぅ >
列車名「あずさ」の由来は松本を流れる「梓川」からきている。ちなみに「梓川」の由来は松本あたりが「梓(あずさ=キササゲ)」の産地だったこと。

松本駅~上高地までが大変!

松本駅前にJTBの12人乗り送迎専用車が待っていた。他に同乗者は老夫婦が一組だけ、さすがにコロナだガラスキじゃ。
しかしそこから上高地までは距離が約50キロ。この道がなんとも凄かった。行程の半分を過ぎたあたりから、谷川沿いの道路脇は至る所が崖くずれだ。さらに「大型車両がスレ違えるの?」って思えるほど狭くて長いトンネルが延々と続いた。「こりゃまたとんでもない道路だ!」 そんな道を1時間半近く送迎車に揺られたのだった。
【*】松本駅から上高地への行き方 https://www.youtu
【*】【前面展望】新島々駅~上高地バスターミナル(youtube1時間)

初日は雲がかかって残念!

手荷物をホテルに預けて初日の散策に出かけた。
上高地のシンボル「河童橋」からは、穂高連峰を仰ぎ見る絵葉書のような大パノラマを期待していたのだが、残念ながら山頂部は雲に隠れて上までは見られなかった。

「五千尺キッチン」からの眺め

「河童橋」あたりには大きなリュックにヘルメットをくくりつけた「本格登山者」もいれば、家族連れや腰の曲がった婆さんなど、いろんな目的の人々が混在している。そして皆さん楽しそうな顔してるのがステキだった。

ランチは「山賊焼」

まずは「河童橋」わきにある「五千尺キッチン」でランチした。 松本の郷土料理に「山賊焼」ってのがあるそうで「山賊焼定食」を食べた。
「山賊焼」とは物騒だが、名の由来は< むかし山賊がいて旅人から物を取り上げていたそうです。そこから“取り上げ”を“鶏揚げ”にかけて、また山賊の傍若無人なイメージと鶏肉の一枚肉を豪快に使った料理になぞらえたのが始まりだそう > う~む…ダジャレかい。
鶏肉のボリュームは1.5人分とタップリあったが、お味は何のことない「味付けしたタダのチキンカツ」いわば釧路の「ザンギ」だった。

「河童橋」と芥川の「河童」

「河童橋」を前にして「ここが…芥川の河童なのか…」と思った。
芥川龍之介の「河童」は、或る精神病院で「狂人」が「河童の国」へ行ったときの体験談を聞き取った内容のファンタジー小説。一見易しそうだが、けっこう複雑な意味内容が込められている。
< 僕は…上高地の温泉宿から穂高山へ登らうとしました。… 穂高山へ登るのには御承知の通り梓川を溯る外はありません。僕は前に穂高山は勿論、槍ヶ岳にも登つてゐましたから、朝霧の下りた梓川の谷を案内者もつれずに登つて行きました。… >
物語はこうして始まるのだが文中に「河童橋」は出てこない。
< 上高地の河童橋は本作以前に存在しており、むしろ「河童」橋の名称の方が本作の着想に影響を与えたと思われるが、本作の発表および芥川の自殺によって、より知名度が上がることになった。(Wikipedia) >

登山好きだった芥川は17歳の頃に槍ヶ岳へ登ったという記録がある。上高地のこの場所から芥川の「河童」が産まれたのかと思うと… すごく感慨深かった。

【左写真】芥川が1922年に描いた「河童図屏風」(長崎市の長崎歴史文化博物館藏)、【右図】芥川筆、小穴隆一宛書簡「田端の河童と本郷の河童」

【*】青空文庫 芥川龍之介「河童」https://www.aozora.g
【*】芥川龍之介『河童』の登場人物、あらすじ https://bung
【*】芥川龍之介著『河童』―狂気の所在― https://www.dinf.

大正池散策

上高地は1500メートルの高地にある細長い平地。(ランチした「五千尺キッチン」の「五千尺ホテル」は、1,500mが約5,000尺であるところからの名づけられた)
上高地は海抜0mの場所と比べると10℃ほど気温が低い。夏も暑さを避けて特別な装備なしで高原散策=ハイキングを楽しめる。定番コースには「① 河童橋~大正池」「② 河童橋~明神池」の2つがある。

私は、初日に「① 河童橋~大正池」を、二日目に「②」コースを歩くことにした。 「河童橋「でランチ後「バスターミナル」まで戻り、バスで「大正池」まで行った。そこから歩いて「ウエストン碑」を経てホテルまで戻った。歩く距離は約4Km。

「大正池」は、焼岳が1915年(大正4年)に噴火し、泥流によって梓川が堰き止められてできた、だから「大正池」と名付けられた。毎年土砂を取り去っているものの上流から流入する土砂の堆積が酷く、そのうちに埋まってしまうそうだ。波ひとつ無い静寂の池だった。

「大正池ホテル」の裏側から入り、整備された遊歩道を15分ほど歩くと原生林の中に広がる小さな田代池と湿原に着いた。久し振りに見る湿原は、北海道東部に住んでたころを思い出して、ちょっとセンチメンタルになったよ。

ほとんど平坦で良く手入れされた散策路が続く。湿地帯には木道が整備されとても歩きやすい。ただし数日前まで増水のため通行禁止だったという。ときおり薄日がさすものの、急に大粒の雨が降り出したりした。だが森の中では木立の枝先が空を覆って傘代わりになり雨粒があまり落ちてこない。天気は生憎だったけれども久し振りに自然の中を心地よく散策した。

素晴らしき「上高地帝国ホテル」…ってか?

「上高地帝国ホテル」はわが国初の本格的山岳リゾートホテルで1933年開業。今年の営業期間は4/2~11/14。冬場の4ケ月間は営業していないから、スタッフの皆さんは「帝国ホテル東京」から派遣されてるそうだ。しかし、「帝国ホテル」だからといってサービスや食事が東京の帝国ホテルのようなわけでも「無いらしい」…ってことは、ネット情報で分かっていた

オイっ…これが「帝国ホテル」のチェックインかょ!

レセプションのお姉さまの手際がすごく悪かった。
パソコンに打ち込むのにすご~く時間がかかる。いったい何を打ち込んでんねン! タブレットに氏名・住所などを手書き入力するのにもタブレットがうまく反応しない。
パソコンやタブレットのソフトがお粗末なのか人間が無能力なのか、近頃のビジネスホテルじゃ2分もかからないチェックインに、その倍以上の時間がかかった。レセプションがこんな状態じゃ先が思いやられるぞっ。気が短い私はのっけから不安になった。

ベランダからの眺めは最高

ベランダ付きツインの広さは他のクラシックホテル並で普通。広めベットでアメニティはとても充実。ベランダから見る緑の林越しの穂高と焼岳の眺望は最高だった。

夕食は少々残念だった

夕食は17:30から。メインダイニングは格調ある山小屋風。

着席して驚いた。近頃はどこのホテルでも食事時はガラスキだったから、どうせここも…って思っていたが、ほとんどのテーブルが客で埋まっている。久し振りに普通の賑わいの中で食事した。コロナの最中でこれだけの人気なのだから、平常時には予約が取りにくいってことが良く理解できた。

さ~て、< 夕食は帝国ホテル伝統の味に信州の旬の素材の彩りを加えたフランス料理のフルコースをご堪能… >と、あったのだが…

ディナーのメインは、シェフが皆の目の前で切り分けるローストビーフ。8ミリほどの厚さで、普段食べてるペラペラのビーフと違ってまるでステーキ。これには満足した。「お代わりはいかがですか?」とのことだったけど、魚料理までが濃いめ味・ボリューム有りすぎでもう食えないよ!

メインは良かったのだが、全体的には少々残念だった。
フレンチのフルコースは「お~っ」と眼で楽しめるような華やかさがあるものだがここは見た目が「地味」美しい盛り付けの基本は「配色」「高さ」「バランス」の3つだといわれるが、ここではいずれもセンスが不足している。そして全体的に濃いめの味付けで量も多い。途中の口直しのソルベも無いしワインは重すぎ、コーヒーは苦すぎた。

私が不平そうな顔をしてたら奥さんが言った。
「田舎のフレンチね」
まさに絶妙な表現だ。そして続けて語った。
「昔、私が友達の結婚式で食べた「東京の帝国ホテル」のフレンチは、それはそれは素晴らしかったのよっ。でもね、ここは不便な山の中でしょ。冬場は営業してないしスタッフは東京からの派遣でしょ。だから仕方ないのよ。でも、私はこうしてここに居られるだけですご~く幸せ。だって40年も待ったんだもの。」

私にとっては、九州旅行の雲仙観光ホテル」のフレンチが素晴らしかったクラシックホテルのトップに立つ帝国ホテルなんだからって、それ以上のものを期待していた私が欲張りだったんだと思った。
さて、夕食は少々残念だったけど、しかし「上高地帝国ホテル」にはその穴を埋めるべきとっても素晴らしいものがあった。

つづく

【*】【上高地帝国ホテル】 ♡素敵過ぎた https://www.you

 

 

 

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