もっとも最近?…上野の「都美術館」へ行ったのは2016年の「生誕300年記念 若冲展」だったから5年前になる。それ自体久しぶりだったが、上野へはホントに行かなくなったナ。
全国規模の公募展が開催可能な施設として、六本木に「国立新美術館」が2007年(H19年)開館してはや15年。それまで都美術館で開催してきた公募団体展のうち、かなりの数が移動した。だから上野の「都美術館」へ行く必要が無くなったのだった。
「都美術館」の公募展いろいろ
いま「都美術館」で開催中なのは「都美館企画ゴッホ展」と、公募展の「創画展」「水彩展」「南画院公募展」「書鏡院展」「大作公募展」「蒼樹展」「フィレンツェ賞展」だった。
私が今回「都美術館」へ行った目的は「創画展」を観るためだった。
でも、「創画展」があまりにガッカリだったので、口直しに「その他の公募展」を観ることにした。その一つが既に報告した、驚きの「大作展」だった。
そして、次に観たのが「フィレンツェ賞展」。
これは小規模ながら、中々・とっても・すご~く…、観ごたえあるコンクール展だったぞ。
「フィレンツェ賞展」
「フィレンツェ賞展」は、「コメリ」の創業者が創設した「雪梁舎(せつりょうしゃ)美術館」による若い作家の発掘を目的としたコンクール展。
応募条件は50歳以下、具象系。第21回展の今年は、185点の応募の結果、入賞5点の入選38点。会場は「C室」、地下室にあたる天井が低くて狭苦しいスペース。
「フィレンツェ賞展」は、ほとんど期待していなかったのだが、若々しさと活力に満ちた力作が並んでいて感激した。やはり「若さ」ってものは表現において貴重な要素であることを感じた。
せっかくだから全部観た
全室スライドショーで紹介しよう。これでどうだ!
「蒼樹会展」は、いわゆる趣味の会的な雰囲気がする。
「自由な創造活動、自己主張を尊重し『蒼樹の芽を大成させる事』を目的として活動…ジャンルを超えて幅広く交流を行い和気藹々楽しい会です」とある。第1回展は昭和39年。『蒼』の文字は「より濃い青」を意味しているのだから看板の色は群青色にすべきだな。金銀銅など「賞」もいっぱい出し合って楽しそう。入り口看板には陶芸、工芸とも書かれていたが、作品は見当たらなかった。
「水彩連盟」は、水彩画の向上発展のために結成された団体。
「油彩画と比べて下に見られる風潮に異を唱え、水彩画の存在の確立を…」そう願って発足した公募展だ。日本を代表する水彩画公募団体の一つ。50号ほどのサイズに描かれた作品は、表現傾向はバラエティに富み、油彩のようでもあり日本画のようにも見える。皆さんなかなかの筆達者だ。水彩画だと侮っちゃいけないと思ったよ。
「南画院展」は、現代南画の普及と発展を目指して設立された。
だが最近は、画材の枠を超え様々な表現手段の作品が出品されるようになった。その結果、南画の他に洋画・工芸、写真を加えた総合美術団体となった。
写真展示室でのこと、二人のご老体の会話が面白かった。
「〇〇さんがナ、上野駅から歩いてナ、何とかここまでたどり着いて、一日おったんじゃとよ。」「ほう、そりゃあ良かったのう」
よく似た名前の団体に「日本南画院展」がある。こちらの方は、各地の水墨画教室とタイアップした本格的な南画集団。3月に国立新美術館で公募展を行っている。
「日本書鏡院」は、長谷川耕南によって創設された書道団体。
書道の芸術性と実用性の両面を通じて、理想的人間形成に努め、年令層を問わず創造性と個性に富む書道教育を目的としている。おそらく書道教室のお師匠さんとその生徒たちの作品なのだろう。「2×8(にはち)サイズ」は60×240cm。とても長くて巨大な用紙。それがズラリと並ぶと圧巻だった。書道作品の観方は知らないのだが、観ていると次第に違いが分かるようになる気がしたな。小中高の生徒たちの作品もなかなか面白かった。
いろいろあって面白い
これまでは、大規模のメイン公募展には行くものの、同時期開催のその他 ” 弱小 ” 団体展は覗いてみることもしなかった。でも、観てみたらそれぞれ面白かった。
大体が趣味の会の延長で、グループ展が拡大して公募展になったような感じがした。一年中、こんな感じで展示がなされているのだから、全国にはホントに多く「絵を描くこと」を好む人たちが居るわけだ。そのことをもっと大切に思うべきだと、あらためて感じた。