いつまで続くのだろう、第7波のコロナが蔓延し始めた。この分では「収束」はありえない感じだ。でも、おかげで人出が鈍いからどこへ行ってもすいてるしホテルも格安設定だ。平時ならば何するにも行列覚悟の「都内旅行」へ、せっかくだから行こうじゃないかってことで「上野・京橋一泊観光」に出かけた。
「初めての上野公園」の意味
私が、初めて上野公園へ行った時からもう50年も経つ。
公募展に出していたから40代半ばまで20数年は毎年数回通っていた。その後、海を渡ってからも数年に一度は必ず行っていた。その目的先はほとんど都美術館だった。だから「上野公園へ行った」と言えども公園の右半分だけ(下図オレンジ)うろついていただけだった。
今回の目的は、公園の左側の「上野東照宮」、そして「東京文化会館」の見学(下図青〇)。ここには一度も行ったことが無かったから、その意味で「初めての上野公園」ということなんだ。
雨の上野公園
今年の梅雨は例年になく早く開けた。だがその後ふたたび前線が南下して梅雨のような日々が続いている。雨降りの中を上野公園へ行った記憶が無いから、その面でも初めてだった。
気温26度だが湿ってるからけっこう涼しい。暑い中を歩くよりもズ~ット心地よかった。雨降りのおかげかほとんど人がいない参道を、ゆったり歩くってのも悪くないもんだと思った。
朝10:20分に「東照宮」に着く。周りには観光客が誰も居なかった。
「上野東照宮」
「上野東照宮」はJR上野公園口から徒歩5分で行ける。
ここは「日光の東照宮」まではお参りに行けない江戸の人々のために家光により建てられた。その後の戦争や災害を免れて現在に至ったことは奇跡的だと言われる。
参道の両脇に200基もの石灯篭がズラリ並び、さらにその先には40基以上もの銅灯篭(あかがねとうろう)がある。これは壮観だった。
東照宮は正面の「唐門」だけ眺めて、有料の「拝殿」は透塀から覗き見た。唐門の彫り物の説明書きがあった。これは分かりやすくてとても良い配慮だな。
参道のすぐ脇にスゴク立派な「五重の塔」がそびえている。この塔は細部まで作り込まれているからすごくキレイだ。過日見た「池上本門寺の五重の塔」も江戸四塔のひとつに数えられるのだが、あの塔は装飾が少なくて味わいが無かったな。
「韻松亭」と「上野精養軒」
「上野公園でランチする場所を探してよ」
数日前に奥さんからそういわれた。
「ん~、メシ? 精養軒しか知らないな~」
上野でメシなんかほとんど食べたことが無かったから、他には全く思い当たらなかった。
上野といえば「精養軒」、精養軒といえば「ハヤシライス」と言われるレストラン。昔から名前だけは知ってた。でも私はそこで食べたことも無ければ上野公園のどこにあるのかも知らなかった。
結局、奥さんが上野公園のランチを検索して、言った。
「精養軒のとなりの韻松亭で「茶つぼ三段弁当」を食べたい」
「ん~?インショーて~、チャツボ…、なんだそこ?」
「懐石の料亭だよ」
「ゲっ、高そうだ!」
「そんなことないよ。茶つぼ弁当は1690円だよ。あんたは花籠膳で良いんじゃないの2000円ぐらいだし…」
ということで、私も調べてみた。
「韻松亭」は、寛永寺の「時の鐘」のすぐ脇に建つ和風料亭。その鐘の音が松に韻くさまから「韻松亭」と名付けられたそうだ。
明治8年創業。上野の杜の中に佇む、歴史ある日本家屋の【韻松亭】。季節の新鮮食材や、毎朝職人が国産大豆から作る自家製豆腐など…素材にこだわり、一つ一つ丁寧に作り上げる豆菜料理を、彩り豊かな御膳や会席料理でご堪能ください。風情あふれる和の空間に施された大きなガラス窓からは、四季折々の美しい風景を眺められます。
歴史を感じる日本家屋
確かに「風情あふれる和の空間」だった。
コロナで雨降りだったからか、予約もしてないのにすぐ奥の個室に通してくれた。
躙り口(にじりぐち)から入る個室なんて初めてだ。窓からは落ちついた坪庭が見える。
お安いランチごときにこんな贅沢なお部屋を使っていいんか?って恐縮したよ。
ネットで見たメニュー写真ではあまり分からなかったのだが、料理の実物はま~とっても可愛らしかった。下写真【上】が「茶つぼ三段弁当」。たしかに三つ重なった「壺」の中に、細かな料理がいっぱい組み込まれていた。遊び心満載だ。
私の「花籠膳」【上写真】は、幾種類あるか分からないホド多くの色々な料理が竹籠の円に浮かんだように盛付けられていた。よせ豆富 生湯波 生麩田楽 蟹真丈 海老酒煮 近江赤蒟蒻 里芋 南瓜 茄子 ほか。 ミニュチュアの作り物のようで、ほんの一口ずつなのだが、それぞれ味わいが違いとっても楽しかった。
実はこの「花籠膳」には「茶碗蒸」がついていることとご飯が「豆ごはん」だけの違いで、それ以外ほとんど同じ料理だということだった。おかわりができると言われて、豆ご飯と赤だしは2杯いただいた。
最初にお茶が出された時「カラチャです」と言われた。
ふしぎな味わいだったので「カラチャって何だろね」とスマホで調べた。そしたら【空茶】=茶菓子なしで飲む茶、【唐茶】=中国式に飲む茶、との二つがあった。
食事が来た時、仲居さんに尋ねてみた。
「調べたら、空茶と唐茶の二つの意味があるって言うんだけど…」
「あ、あれはオカラで作ったお茶なんです。」
そういえば、ここはもともと「自家製の豆腐、湯波で作る豆菜料理」が売りの料亭だった。
「そうか、オカラ茶ですって言ったわけか」って笑った。
食事を終えて文化会館へ向かおうとしたら「ゴ~ン…、ゴ~ン…」と鐘の音が数回聞こえた。「あ~、12時にはとなりにあるあの鐘を打つのか…」
すごく情緒を感じた。
私は「上野公園ならよ~く知ってますよ」って顔してたけれど、こんなにも味わいあるランチがあることを50年も知らずにいたとは、なんという物知らず、なんちゅう愚か者だったのかと反省した。
つづく