春爛漫、伊豆半島バスの旅(1)
春の旅行に「伊豆半島」を選んだ。
3月末の伊豆ならば、花見しながら一泊で気軽に行ける。
とはいえ伊豆半島はけっこうデカイ。何処へ行こうか考えた。
まず思いつくのはペリー艦隊が入港した「下田」だ。そしてこの春リニューアルされた特急「踊り子号」。他には加山雄三が愛して止まない西伊豆「堂ヶ島」だった。
まず何と行っても下田へは行かなくちゃいかんな。そして西伊豆だったら堂ヶ島と松崎だな。
ということで、三島で駿豆線に乗り、修善寺からバスで堂ヶ島・松崎へ【泊】、翌朝バスで下田へ、白浜を経て「踊り子号」で横浜までのルートを組み立てた。
新幹線やローカル列車そして路線バスから踊り子号などを組み合わせる…、そんな複雑な旅程を私が考えられるはずがない。もちろんぜんぶ奥さんが組み立ててくれた…サ。
伊豆には温泉地がいっぱいあるのだが温泉だけじゃものたりない。
他に何か見どころはないものか?ガイドブックに、
【海が割れる驚異の“トンボロ現象”!西伊豆堂ヶ島「三四郎島」】とある。
お~、これは面白そうだ!
でも「トンボロ現象」って…何だ?
「トンボロ」とは何かを調べてみた。
< ふだんは海で隔てられた陸地と島が、干潮の時にのみ、隔てていた海底(砂州や瀬)が現れつながることをトンボロ現象と言います。大潮の干潮時前後1時間に表れる自然現象。海岸と島とが陸続きになり歩いて渡ることができる >
< この「トンボロ現象」は日本でも大変珍しいもの。タイミングが良ければ、「トンボロ渡り」が体験できます >
「トンボロ」というのはイタリア語での呼び名で、日本語では「陸繋砂州」
海岸から近くにある島の周りは波がぶつかり合って勢いが弱まり、結果的に波の緩やかな海域ができる。ここには砂が集まり堆積しやすく、それがやがて道となって島と海岸を結ぶようになる。この道がトンボロ。堂ヶ島では大潮の日の干潮にだけ潮が引いて道が現れる。
ということだが、しかし「堂ヶ島のトンボロ」を楽しむには条件がある。
・日中に道が現れるのは3月~9月
・歩いて渡れるのは潮位が30㎝以下の日
・干潮時刻の前後1時間程
だから旅行日程を決めることが、とってもムズカシかった。
3/30日、干潮時刻12:33、潮位14cm
10~2月は日中に潮が大きく引くことが無いから道は現れない。道が出来るのは3~9月の大潮の干潮時刻の前後1時間程。だから適当に行っただけでは「トンボロ渡り」はできない。現地到着時刻や昼食時間も考慮しなくちゃならない。3月下旬の潮位表は以下のようだった。
「黄色」の日だけが「トンボロ渡り」で、磯遊び出来る。
日 付 干潮 潮位
3/30日 ◎12:30、 14cm
3/31日 ◎13:11、 8cm
4/01日 ◎13:51、 8cm
潮位とともに天気も良くなくちゃいけない。
春は週一で雨が降るから出発の一週間前に天気予報で予想を確認した。
3月末の3日間は「好天・20度」よ~し、このあたりならベストだ!
「3/30」に出かけることにした。
春爛漫バスの旅
新幹線で三島着8時20分。伊豆箱根鉄道駿豆線に乗換えて修善寺へ。
修善寺駅からは東海バスに乗った。さすがに春! あたり一面満開の桜だ。桜や菜の花が咲き誇る山里を路線バスで延々と走った。駿河湾沿いにでると断崖と穏やかな海水浴場が交互に現れる。
バスで一時間半は退屈だろうなって思っていた。
でも違った。すごく楽しかった。
右を見て「わ~!」左を見て「オ~っ」、花咲く春の桜街道と西伊豆の海岸線に歓声をあげた、「こりゃまたスゴイや」 <大声出さないのっ、幼稚園児の遠足みたいネっ>って奥さんから笑われた。
新幹線や駿豆線などの鉄道は平地を走る。路線バスは山奥の高低差をものともせずにグイグイ走る。列車から見える風景とは異なり、路線バスから見える光景には山里に生きる人々の生活が伝わる気がした。久しぶりに懐かしい山里の感触を得たおかげで、一時間半まったく退屈することがなかったヨ。
バスの乗客はほとんどいないから路線バスは貸し切り状態だ。
バスの中で奥さんと会話した。
「旅行者は誰も乗ってないね。」
< 当たり前だよ!皆んな自家用車やレンタカーだよ。路線バスでトコトコ行くのは私たちぐらいなモンだよ。>
堂ヶ島には11時に着いた。
堂ヶ島は一大観光地なのだがコロナ禍のため観光バスは一台もいない。観光客もまばらだった。
これが堂ヶ島のトンボロだ!
30分間ほどで昼食をすませてトンボロへ向かう。
干潮時刻にはまだ30分ほどあるのだが、すでに幅広い道が出来ていた。
結構な数の観光客が「トンボロ渡り」に来ていた。
最初の島は「ゾウ島」。
たしかに正面から見ると右に鼻を伸ばした「象」のようにも見える。
足元はゴロタ石だらけ。半乾きの海藻が石を覆いスベるからとにかく歩きにくい
「おッ!とっと」「うオッ…危ない!」
砂浜を優雅に歩くようにはいかない。
歩きにくさの中を約200m、周囲の景色を見るよりも足元ばかり見つめながら進んだ。
2つ目の島との間には潮溜まりが幾つもある。
そんな水溜りを膝をまげて見つめると小さな巻き貝が幾つもジッとしていた。
取り残された小魚がスイスイと泳ぎ、岩の陰からカニが這い出してくる。
短時間だけの一つの小世界が出来上がっていた。
潮溜まりで遊んでからの戻り道、干潮時刻が過ぎてもまだまだ「渡って来る」観光客。
干潮が終わりれば逆に潮が満ちて来めるはず。波が打ち寄せて道が狭くなってから陸に戻りたかった。しばらく波間を見つめていてもそのケがない … 潮が戻るには相当時間がかかるようだった。波打ち際を眺めていたのだが潮はなかなか満ちてこない、
しかたない「もう帰ろう!」そう言って引きあげた。
左写真は翌朝ホテルからの撮影。満潮でしっかり潮が満ちていた。
右写真は同じ位置で、干潮で道が出来はじめてるところ(写真転用)。
半日で、海が陸になる!
潮の干満によるスゴさは、昨年行った宮島ではじめて感じたが、
自然の威力はスゴイものだと改めて感じた。
今回の堂ヶ島のトンボロもまた凄かった!
普段の生活では感じることがないけれど、
大自然は、驚くほど巨大なエネルギーを持ってるもんだ。
楽しい春の磯遊びでした。動画をつくってみましたよ。
◆ 堂ヶ島・三四郎島のトンボロ渡り You Tube(3:37)
◆ 西伊豆「海の道」出現、トンボロ開き 500人渡り初め (静岡新聞)
◆最近UPした動画
2021/03/27 桜満開 みなとみらい~大岡川 https://youtu.be/0C9O7odOgOI