0925 リヒター展で驚いた

美術館

一粒で二度おいしい

秋の公募展の皮切りに「行動展」と「新制作展」を観に行こう。それから「リヒター展」が10月2日で終了するし…

そう思っていたら奥さんが言った。
「大相撲を観に行こうよ。」

それは数年前から言ってたことなんだが、娘家族と一緒に行く前に「下見」として一度行っておこうってことだった。

じゃ~、それらを纏めて行っちまおう、ってことで「大相撲」と「リヒター展」・「行動展」・「新制作展」一泊二日の東京ツアーとなったのさ(奥さんは大相撲の後は自主行動)。

「一粒で二度おいしい」とは、かつてグリコのキャラメルCMにあったけど、「一泊で4つ美味しいお得ツアー」って訳なんだ。

リヒター展の目的

リヒターのピンボケ作品は、昔から数点知っていた。その後に登場した、ヘラで絵具を擦りつけ削りとった「ヘンな作品」を見ることがあった。
「ン~、これは手描きなのか…写真なのか?」印刷で見ただけでは分からなかった。

 

竹橋の近美で「リヒター展(6/07~10/02)」開催を知ったとき「これでやっと疑問解消だな」って思った。

「美術手帖」は、もう20年以上見ていないし、「芸術新潮」は今も有るのか?って感じで、現代的情報はほとんど入手していない。
ネットで調べる気力も無かったから、リヒターは今や超有名になっちまったってことだけ知ってるが、それ以外は全く分からない。

今回のリヒター展の目的はただ一つ、「ピンボケ&ヘンな作品は、手描きか写真か?」ってことだった

驚き(その1)会場に入って驚いた

リヒター展は、時間指定前売り券をネット購入だった。

予約チケットの申込みカレンダーを見ると、ほとんど「空きあり」だ。
「そりゃそうだ、リヒターみたいな分かりにくい絵を見に行く人なんて、そう多くないハズ。そもそも【時間指定前売り券】なんか必要ないだろ~」

案の定、入り口前にほとんど入場者はいなかった。

でも、会場に入って驚いた、
「お~、なんやお客さん結構いるじゃないか!」
この数年はコロナで入場制限してるから、どこへ行ってもガラスキだったから、人がゴチャゴチャうごめいてる室内は、デパ地下以外は久しぶりだ。
若い人が多いが老若男女いろいろいる。

 

「リヒターなんて、誰が観に行くのや…」 って思ってたから、これだけの観客数は不思議だった。

驚き(その2)撮影OKに驚いた

入口に掲示があった。
<この展覧会は下記の条件で写真撮影できます
のついてる作品は撮影できません】
【動画の撮影はできません】

<写真の利用に関して>
【私的利用のみ】
【ブログやSNS.写真共有サービス等で公表する場合…肖像権に…ご注意ください】
【ブログやSNS.…利用は利用者の責任で…】

ってことは、会場内で撮った作品写真やスナップをネットに上げても構わないってことかい!
ここまでオープンを公言するのは初めてだ。
でも、どうせ【✖】印ばっかりだろうナ…って思ったサ。

驚き(その3)説明聞いて驚いた

あちらこちらに鏡がある。
普通の鏡もあれば黒っぽい鏡も、しかもビッグサイズだから不思議「なんで鏡が…?」

最後に観た部屋の鏡は、黒くて幅が8メートル近い。いったいこのガラスは、もともと建物の設備だったのか、今回の展示品の一部なのか?

警備のオネーサンに尋ねてみた。
「あの鏡は、作品と関係あるの?」

<あ、ハイ、作品の一部です>
<この部屋はビルケナウって言いまして、鏡も含めて…全部がひとつの作品になってます。>

説明が続けられた。
<リヒターは、一度はあの4枚の写真を拡大して描いたんです。でもそれを塗り潰して、こちらの4作品ができました。向かい側の4点は、それを印刷して複製したもの。それらを全部映せるサイズの鏡を設置してあります。>

「エッ? このヘラ塗り絵具の下に、あの写真が一度は描いてあったの?」
<ハイ、それを全部塗りつぶしちゃったんですッテ、見えないですけど>

「エ~ッ、そんなこと全く分からなかったな~」
「あのサ、いま言われた説明はどこにあるの?」
<この部屋に、その説明はありません>

「それ、どこに書いてあるの? カタログには書いてあるの?」
<いろんな所に書いてあるみたいですけど、小さな記事だったりするから分かり難いかも知れませんね>
「じゃ~サ、ここで観ている人たちの中で、そういうこと知らないで観てる人がいっぱい居るってことなの?」
<そうですね。分かって無い人も多いかも知れませんね>
「・・・ム…」

そういえばさっき、二人組のジーサンが、指差しながら言っていた、
「よ~分からんな~、心霊写真みたいだな~」
年寄りは面白いこと言うもんだと思い、下の写真を撮った。
でも、絵具の下に、アウシュビッツの殺戮画像が隠されてるんだから、あながち間違って
ない。
大した推察力ってもんだ。

分からないことも面白い

帰宅してからネットを見ると、たしかに「ビルケナウ」の作品説明がアチコチに点在していた。
リヒターが作品に込めた意図は、それを「知ってる人だけ分かる」ものだったのか。

でも、思った。
もしも私が、作品の仕組み・意味を、文字解説を通じて事前に理解し、それから会場で作品を観たとしたならば、説明の確認作業ってことになる。

しかし今回私は、
「分からん?…なんやコレ? ま~、チョットこれ聞いてみよ」
「え~! そういうコトだったの~ びっくり!」
この驚きは新鮮だった。

これまでは仕事柄、説明する側だった。だからいろんな知識を仕込んだ上で作品を観ていた。
実物を目にして、謎といっても良いような疑問に包まれた。その疑問が口頭での解説によって、その場で解きほぐさされた。
書物の文字を通じて識ることに対し、生の言葉で知ることとの相違を感じた。

久しぶりだ。
清々しかった。すごく楽しい体験だった。
何も知らずに見ることも面白い。
分からないで観ることも結構イイものだ。
そう思った

【✖】印はどこにある?

会場に入り見渡したけれど、写真ダメ【✖】印がどこにも見当たらない。
「へんだな~?」

以前「サザエさん展」で勘違いしビシバシ撮ってたら、監視員さんに注意された。
以後、同じ過ちを繰り返さないように注意しようと思った。

だから警備員のオネーサンに聞いてみた。
【✖】印以外は、撮影OKって書いてあったけど、ダメな作品ってどれなの?」

<ハイ、あちらの点と映像点だけ【✖】で、基本的に全部大丈夫ですよ>
「ホントにいいの? よくそこまでオープンにしたよね~。」
<そうですよね~、すごいですよね~>
警備員さんも驚くほどの進歩ぶりだった。

「あのサ、今日は平日なのに人が多いけど、いつもこんなに混んでるの?」
<ハイ、そうなんです。いつも混んでます>

「なにか大きな広告でも出したの?」
<イ~エ、日曜美術館やふつ~の番組では幾つか取り上げられましたけど、特にはしてませんね~>

「不思議だよな、リヒター展なんて、分かり難いだろうし知られてないから、すいてるって思ってたんだ。草間彌生展まではいかないけど、年齢層も幅広いしたくさん来てるね~」
<ですよね~、私たちも不思議なんです。見込みがアマかったデスう~ハイ(笑)>

■近頃、警備員さんに質問だ

たいたい警備員さんたちって、ヒマそうだ。
だから話しかけると面倒がらずに応えてくれる。

特に今回の方たちは、嬉しそうに反応してくれた。次第にノッテきて、聞いてないことまで説明してくれる人もいた。
おかげで、「手描きなのか…写真なのか?」問題は解決したうえに、
「ガラスと鏡の謎」も「ビルケナウ」の詳細解説まで受けられて大満足だった。
めでたしめでたしだな。

「リヒター展2022」 驚き(その1)入場者が多すぎて驚いた。驚き(その2)撮影OKに驚いた。驚き(その3)説明聞いて驚いた。え~! そういうコトだったの~ びっくり! 分からないことも面白い

おわり

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